2414号

 死語と化したので、キセルとか薩摩守と言っても若い人には通用しないかもしれない。キセルは刻みタバコを吸うための喫煙具。管を意味するカンボジア語のクセルが語源という。薩摩守は、源平一の谷の合戦で討ち死した平清盛の弟、薩摩守忠度のことだ。どちらも無賃乗車や不正乗車を指す隠語▼キセルとは、両端に金属を使って中間は竹製という形状からの連想で、乗降駅だけの切符しか買わずに途中の運賃を支払わない手口を表す。忠度は読みの通りで、ただ乗り。一昔前の新聞には「薩摩守捕わる」といった見出しが躍ったものだ。しゃれた言い回しだが、詐欺罪を構成する犯罪だ▼最近はカードの普及によって、鉄道でのキセルはめっきり減ったが、代わって横行しているのが、高速道路でのETC(自動料金収受システム)を悪用したキセル行為だ。つい最近も特大車として登録すべき大型観光バスを路線バスの大型車だと偽って、2年間余に500万円を超す差額料金の支払いを逃れていた千葉県内の観光会社社長らが県警に逮捕されている▼“カルガモ走法”と呼ばれているが、前方の車の後ろにぴったりと付いて、ETCのゲートをすり抜ける手口も後を絶たない。嘆かわしいことに、多くはタクシーなど運転のプロの犯行だ。大阪市の個人タクシー事業者は、「自腹を切りたくない」と息子の身障者用機器を営業に使い、半年間に百数十回も通行料の半額をだまし取っていた▼人命を預かる運転者に求められる第二種免許の保有者は、国民皆免許時代を迎えても全国に約240万人しかいない。7900万人の免許人口の3%にすぎないエリートだ。ロードリーダーと称され、一般ドライバーに範を示す役割が期待されているのに、キセルはするわ、事故は減らないわ、ではお話にならない。環境は厳しくとも歯を食いしばり、二種免許保有者としてのプライドを守り抜こうではないか。